・拉致と外交(カードの切り方が外交だ)

 安倍晋三首相は米メリーランド州のキャンプデービッドでブッシュ大統領と会談し、引き続き米国と緊密連携を図ることで合意し、拉致問題の解決への日本政府に対する支持を確約してもらったそうです。それにしてもあらためて拉致問題というのは、とても優秀な外交カードだと思う。ぶっちゃけほぼ完璧といってイイ。


 外交とは要するにアメとムチの2種類しかないわけで、具体的に言うと、利権をちらつかせて懐柔するか、何らかの力を背景に脅すかしかないわけですが、拉致問題以前の日本の北朝鮮外交といえば一方的にアメを与え続けるだけだった。もちろんそれ以外に有効な外交カードがなかったからなわけですが、これはホント何の意味もなかった。北朝鮮にアメを与えても何の意味もないことを証明しただけだったといえる。
 しかし北朝鮮による日本人の拉致が発覚して以降、この外交方針は180度変わった。日本が北朝鮮外交で初めてムチを手に入れたといっていい。しかもこの拉致問題、軍事力を背景にしたムチと違って日本にとっては、ほぼノーリスクで切れる外交カードだ。ミサイルや戦闘機は必要ないので何のコストもかからない。
 また、この拉致問題というのは明らかな国家主権の侵害*1なので、他国はこの問題で日本に賛同せざるを得ない。つまり6カ国協議で日本が拉致問題を盾に北朝鮮の援助を突っぱねたとしても、ほかの国はこのことで表立って日本を批判することが出来ない。また人権を声高に叫ぶ日本国内の左派メディアも、この問題では賛同せざるを得ない。
 ホントね、日朝首脳会談北朝鮮の拉致を証明して見せた小泉首相は素晴らしかった。改めて絶賛したい。これは小泉政権の成果のなかで自分が一番評価している点だ。この拉致問題のおかげで、北朝鮮に譲歩する必要はまったくなくなったといっていい。


 それにしても、マカオの銀行バンコデルタアジア(BDA)の在米資産凍結後の北朝鮮レイムダックぶりは凄まじい。はっきり行って完全に詰んでる。改めて時代が変わったんだなとしみじみ思う。中国やロシアからも完全に見捨てられて、時代に取り残された北朝鮮は打つ手なしの八方ふさがりだ。たとえもう一回核実験したとしても、もはや何の意味もない。北朝鮮政府としての打開策を自分なりに考えてみましたが、いまさら金正日が改革開放をするとも思えないので、有効な手立ては何も思いつかない。
 しかし、この期に及んで相変わらず将軍様に従順な北朝鮮国民のあほさ加減には、一応敬意を表したい。これはある意味すごいことだと思う。


 それから政治とは関係なく、一人の人間として横田滋・早紀江夫妻は本当に素晴らしい方々だと思う。娘のためとはいえ、普通はここまで出来ない。自分には間違いなく出来ない。できれば横田めぐみさんが無事、日本に帰国できることを心よりお祈り申し上げます。


その他の記事
 ・安倍首相の訪米と日米同盟(キャンプ・デービッドの昼下がり)
 ・6カ国協議のゆくえ(そして会議は踊りつづける)
 ・北朝鮮の憂鬱(将軍様ご立腹)




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トミー (2006/10/20)

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*1:拉致問題は人権侵害ではなくて、国家主権侵害という点が従軍慰安婦問題とは大きく異なる。慰安婦問題と同列に扱い、相対化させるマスコミも多いのですが、これは明らかに間違っていると思う。