・君はフェルメールを見たか?(カラヴァジェスティ)

 天気の悪かった土曜日とは打って変わって、なんともうららかな春の日曜日。とてもあたたかな朝の日差し。そう、この柔らかな日差しこそが、なんとなくフェルメール。というわけで、日曜日はぷらっと、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムまで「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展(シュテーデル美術館蔵)」を見に行ってきました。
 「空から放射能がー!」って、連日マスコミは賑わいでるけど、渋谷は結構ほのぼのしていた。なんとなく今の渋谷が昔より静かに感じるのは、震災の影響というよりたぶん不景気の影響。昔の渋谷には夜遊びしたら次の日、東京湾あたりに沈められるんじゃないかっていうぐらいの、殺伐とした雰囲気があったのになぁ。どこいってしまったんだ、渋谷のギャル?


 で、さっそく本題なんだけど、あー、もういちいち説明するの面倒くさいんで、自分はフェルメールが大好きってことを分かっている前提で話しを進めちゃいますけど、《地理学者》はやっぱ傑作だわ。うん。イラストなんかで良くみるので、どちらかというとフェルメールの中でも、好きな絵ではあったのだけど。でも本物は違った。畏敬の念すら感じてしまった。
 雑誌に載ってる薄っぺらいフェルメールとはやはり別物。いやまあ、確かに、あの有名な絵が目の前に!と思って、エキサイトしてしまった部分がないとはいわないけど。でも本物すげぇ!フェルメールといえば光の画家とかよく言われているけど、やっぱ個人的に一番すごいと思うのは、フェルメールの絵画に登場する人物の存在感の透明さ。まるで天使みたい。


 いや、地理学者に描かれているのは、宗教画みたいな天使でもなんでもなくて、単なるおっさんなのだけど。でも、その存在がなぜか透明で、とても美しく感じるのだ。まるでこの世のものとは思えないほどに。くっそ、俺はなんでこんな地理学者なんぞにときめいているんだ!・・・と思いつつも、キャンバスから目が離せない。やっぱりフェルメールの絵はすごい。
 たぶん多くの人が、この絵を見ただけで、光のやわらかさやあたりの静けさ、というか、世界の美しさやきらめきといった、万人に感銘と喜びを与える本物の美というものを感じられると思う。あるいは、地味でささやかだけど、本当に大切な人間の美徳というものを。なるほど天使を描写しているわけではないが、他とは違う、やはりこれは一種の宗教画だろう。


 なーんかすごい癒されたわ。やっぱりフェルメールの絵はいい。この絵には人の目を引きつけてやまない力がある。そしてフェルメールの絵画の登場人物に向けられた暖かいまなざしには、本当に癒される。自分がフェルメールと同じ絵を見て、そこに存在する本質的な美しさを共有し、時代を超えて共に共感しているのだとおもうと、なんだか嬉しくなっちゃうよね。
 ただまあ今回、フェルメールと一緒に展示している他の絵については、静かな不満を覚えざるを得ない。フェルメールを目立たせるためにわざと?って勘ぐってしまうぐらい。なんか搾取されてる気がした。でもまあ来年も《手紙を読む青衣の女》を見に行くんですけどね。フェルメールの描いた素晴らしい絵画と、同時代の画家が書いた珍妙な何かをみるために。


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