・フランス大統領選の結末(コアビタシオン)

 フランスの大統領選挙は2007年5月6日の決戦投票の末、右派・国民運動連合ニコラ・サルコジ氏が勝利し、第5共和制の6人目の大統領に選出されました。フランス初の女性大統領誕生を期待された社会党のセゴレーヌ・ロワイヤル氏は、大方の予想通り負けちゃいました。


 それにしても現在のフランスはマジでやばいらしい。まあ昔っからストライキ大好きで、バカンス大好きで、そのくせ価値観だけはいっちょまえだかんなー。自由とか、平等とか、博愛とか、社会福祉とか。フランスなんてこういっては何だが、ほぼキレイ事の建前だけで成り立ってる国家な気がする。もちろんそんな理想は素晴らしいのですが、実際そんなこと叫ぶだけでは、世の中うまく回るはずもなく、フランスの現実もかなり痛々しい。
 平等の名のもとの移民政策のせいで、今のフランスはびっくりするほど黒人さん多いし、それ以外にもイスラム系や中国系の移民だらけだ。移民は「いつまでもフランスは我々を受け入れてくれない」と叫び、フランスは「移民はいつまでも我々の社会に溶け込もうとしない」と叫んでいる。まぁどっちもどっちですけど(笑)。
 それに福祉の名のもとの週35時間労働規制と、一律最低保障賃金(SMIC)のせいで、経済は停滞しまくりだし、若年層の失業問題は深刻だ。仕事はあまりしたくないけどお金は欲しいっていう労働者の気持ちはわからんでもないけど、常識的に考えて無理だろ(笑)
 おかげで2006年11月には移民大暴動が、2007年3月にはCPE*1への反対暴動が起きちゃって、パリが燃えてた(笑)。この二度の暴動の責任を取らされる形で次期大統領と目されていたド・ビルパン首相は大統領選出馬を断念し、そこをうまく立ち回ったサルコジがその勢いで大統領になってしまった。


 このサルコジさん、かなり過激な政治家で大暴動の際には「移民のクズどもを追い出せ!」などと公然と発言している。一昔前のフランスでこんなことを言ったら人権の名のもとに政治生命を絶たれていたところですが、現在のフランスでは表立って移民排斥を叫ぶことの出来ない国民の鬱憤を晴らしたということで、熱狂的に受け入れられている。実際、建前好きのフランス人がなりふりかまってらんないくらい、今や移民問題はフランスの病理なんだろう。
 とはいえサルコジ自身がハンガリー移民で、かつ、フランス国立行政学院(ENA)出身*2ではないという、フランス政治家のエリートコースから完全にはずれている人なので、サルコジに対するアレルギーも結構あるらしい。フランスメディアは片っ端からサルコジ嫌いだし。
 そういう後ろ盾がない分、コルシカの田舎者だったナポレオン*3と同様、ちょっとでも失敗したらすぐにフランス国民にハシゴ外されちゃうんだろうなー。考えてみれば可愛そう。サルコジはこの難局をうまく乗り切れるのかな?結構「運がいい」みたいなので、どこまでいけるか超楽しみ。厳しいとは思うけど(他人事)。


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*1:CPE:若者を雇用した場合2年間までは理由無しにクビにできる労働政策

*2:ENA:フランス国立行政学院の略称。グランゼコール(高等専門教育機関)でフランス随一の超エリート官僚養成学校。フランスは日本もびっくりの超エリート主義で、ENA卒か否かでは天と地ほど扱いに差があるらしい。

*3:ナポレオンは華々しい戦歴で一時はフランス国民に熱狂的に支持されたが、ロシア戦役に失敗すると、エルバ島島流しになってしまった。