・女性をほめるというコト(そして僕は途方にくれる)

 最近はなんというか良くも悪くもなく、失敗するでも成功するでもなく、人に迷惑を掛けるわけでも掛けられるわけでもなく、つまりはごくごく普通の生活をしています。しかしアレだね。この春のポカポカ陽気はやばいね。なんか頭がほんわかする。「なんでこんなことしてるんだろ〜・・」みたいな。窓から見えるもくもくした雲に、30分間も釘付けになったくらいだぜ。たぶん今なら、美しい花々にオリジナルの花言葉を付けてしまえる。そんくらいヤバイ。


 そんな中、新入社員さんが、それどう見ても新品だろっていうパリパリのスーツで各部署に紹介されてて、「いやいや、初々しいねー♪」なんつって、「新人さんは可愛らしいねー♪」なんつって、自分もちょっぴり浮かれてたわけですが、近くの女性に「鼻の下を伸ばしてんじゃねーヨ」的なことを言われたモンだから、自分もカチンときて、「いやいや、○○さんも髪を短くしたから、22歳に見えるよ」って皮肉をこめて言ってやりました。つうか何度も言うけど、自分はショートヘアがあんま好きじゃねっつの。


 そしたら、まんざらでもなそうな顔で「えぇ、そう?ありがと」だってさ。意図が全然伝わってない。いや・・・・・でも・・・・・だって・・・・・本当に申し訳ないのだけど、いくらなんでも22歳には見えないよなあ?冷静に考えてみるに。だってもうあなたは、すでにとっくに30回っているのに。ホント軽い冗談のつもりで言っただけだよ。嘘だよ、嘘。なんというか、完全に誤解だ。でも、めちゃめちゃ真に受けてて、よしんば喜んでくれちゃったりなんかしてたので、逆にこっちが恐縮してしまった。


 そしてこんなことで、ちょっと機嫌が良くなったりしてる彼女を見て、そらあさ、喜んでくれたならそれでいいんじゃないの、と言ってしまえばその通りなのだけれど、自分のちょっとした悪意から発した言葉を、全面的な善意に受け取られて「んん〜・・・なんだかなあ・・」と、ひとり途方に暮れてしまった。心の中の小さな罪悪感が消えない。それはドーナツ食べた後に、砂糖のかたまりが指にこびりついてて、それを舐めてぬぐったり、紙ナプキンに擦りつけてみても、相変わらず残る不快感みたいだ。


 なのでできれば「んなわけないじゃん!」って言いたかった・・・・・。でもそんな、言わなくてもいいことを言って、自分はどうしようというのだろう。ならば最初から言わなきゃいいのに。なんて嫌なやつ。それは自分。でもこういう他愛もない嘘を、何の罪悪感もなしにホイホイ言えちゃう人が、きっと女性にモテるんだろうな。女の人に「あの人はとってもいい人♪」とか言われちゃたりするんだろうな。それはわかってる。てか、そう学んだ。そして、それができるということが、きっと大人ということなのだろう。


 でもなんかモヤモヤするんだよな。嘘つきなのにいい人だなんて、どう考えても矛盾している。・・ような気がする。そうでもないのかな?この「お世辞」と「嘘」は違うという、そんな一般常識レベルの問題が、自分にはどうにも腑に落ちなくて、女性をチヤホヤするというのは、つまり嘘を言って騙してるってことに等しいんじゃないか、つまりそういうことじゃないか・・・・・と、女性に面と向かって言うわけではないけど、そんなことを考えたりもする。未だにこんなことに悩んでる自分は、大人になりきれなくてご愁傷様だ。


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